第6回 ソルティードッグ
今回はソルティードッグをご紹介したいと思います。
グラスの縁に塩がついている見た目が印象に残りやすいカクテルです。
【レシピ】は
グラスの縁をレモン等で湿らせて塩をつけ、
ウォッカ 30〜45ml
グレープフルーツジュース 適量(60〜120ml)
というシンプルなものです。
🔴まずこのカクテルの名前についてですが
"船上で働く甲板員"が由来だという説が一般的です。
当時、船の上ではビタミン不足による壊血病という病が流行っていました。この壊血病予防の為に英海軍では柑橘類のジュースが推奨され、その中で お酒をグレープフルーツで割ったカクテルも飲まれていました。
そこから 潮風を浴び、額に汗して働いている"英海軍の甲板員"を指して"ソルティードッグ"と呼ばれるようになった。
とか、
船の上でお酒を飲んでいる時にグラスに波しぶきが入ったからソルティードッグと呼ばれた
などと言われています。
どちらにしても"海の男"をイメージした名前のようですね😄
🔴では発祥について掘り下げていきたいと思います。
このカクテル、元々はジンベースだったと言われています。英海軍が発祥ならそれも頷けますね😃(因みにウォッカが世界的に流行し始めるのは1945年以降です。)
そしてこのカクテルの原型になったのは
「Savoy Cocktail Book」(1930年初版) ハリークラドック著
にも掲載されている"グレープフルーツカクテル"ではないかと思います。
他にも「The Official Mixer's Manual」(1934年初版) パトリックGダフィー著
にも"グレープフルーツカクテル"は掲載されています。
どちらもジンベースで塩ではなく砂糖を加えてシェークするというレシピになっていますが
私はこれが原型ではないかと考えています。
それが1950年代に「ジンとグレープフルーツと塩をひとつまみ入れてシェークする」というレシピでソルティードッグというカクテルが登場し始めます。
1975年の日本のカクテルブック「カクテルと洋酒百科」藤本義一 著 にもジンベースのソルティードッグが掲載されています。
この頃になると塩はグラスの縁につけるスノースタイルになっています。😀
※海外webを調べてみると1930年のSavoy Cocktail Bookに掲載された"Greyhound"が原型と書いてあるページが多いのですが今回の調査でこのグレイハウンドは確認出来ませんでした😅
因みにこのグレイハウンドというのは犬種です。
このグレイハウンドは尻尾を股の間に入れ 尻尾が無いように見えるので
今でも塩なしのソルティードッグカクテルのことを「塩無し=尻尾無し」という事でテールレスドッグとかグレイハウンドと言ったりします。(同じ理由でブルドッグとも言います。)
🔴ではいつからこのカクテルがウォッカベースになっていったのでしょうか?
今回確認出来た最古の情報は
米で出版された1945年の「Harper's Magazine」です。
この記事にはグレイハウンドバスのターミナルのレストラン"ポストハウス"で「ウォッカにグレープフルーツと砂糖を入れたカクテル(グレイハウンド)が出されている」と書かれているようです。
(米Wikipedia参照
https://en.m.wikipedia.org/wiki/Greyhound_(cocktail))
実際に第二次世界大戦以後からウォッカが流行し始めて様々なカクテルにウォッカが使用されていきます。
その流行の中ソルティードッグもジンベースからウォッカベースに変わっていったと考えられます。
ウォッカの流行はYouTube動画でお話ししております。よかったらご覧下さい。
まとめるとソルティードッグの原型は1930年以前にはありその当時はグレープフルーツカクテルと呼ばれ
ジン+グレープフルーツ+砂糖
それが1940〜50年頃に
ジン+グレープフルーツ+塩
というレシピが登場しソルティードッグと呼ばれるようになっていく。
そして第二次世界大戦以後のウォッカブームの中ウォッカベースのグレイハウンドカクテルも登場。
1970〜80年代に
グラスの縁に塩をつけるスノースタイル、そしてウォッカベースの現在のソルティードッグが主流になっていった。
という感じでしょうか?
ソルティードッグに関しては掲載されている古いカクテルブックが見つからずハッキリとした発祥年代がわかりませんでした。😅
しかし現在一般的なソルティードッグのレシピは案外最近のもののようです。(1980年以降)
一説にはソルティードッグコリンズが原型とも言われているのですがそのカクテルが掲載されている資料を今回は見つけることが出来ずソルティードッグコリンズの話は割愛致しました😅また詳しい資料が見つかればご紹介したいと思います。